研究内容


主に海棲哺乳類の社会・行動・認知に関する研究を行っています。

イルカのふれあい行動(ラビング)

サル同士の毛づくろいはよく知られています。哺乳類ではふれあいを用いたコミュニケーションは重要なものです。イルカ同士も「ラビング(rubbing)」という行動をとります。イルカが胸ビレで相手をこするという行動です。こうした動作は、身体をきれいにすると 同時に、仲のよい個体同士が絆を深めるために行っていると考えられます。水族館で飼育されているイルカでは、ケンカをした後にラビングがよく見られ、関係 を修復するために行われていると考えられているのです。また、野生個体群のイルカたちは、ラビング行動の時に左の胸ビレを使うことが比較的多いのですが、 その理由はまだ解明されておらず、今後の研究に委ねられています。


イルカと人間との共通点

イ ルカは二頭で並んで泳ぐ行動が多く見られます。同調遊泳と言われ呼吸や動きを合わせることで、絆を深めてい るのではないかと考えられます。母子はピッタリと寄り添って泳ぎます。もう少しだけ離れているのがメス同士で、さらに距離をとるのがオス同士であることが 多いのですが、こうした距離感については、人間のペアと共通点があるようです。人間の親子は親密なスキンシップとして抱っこやおんぶをしますし、若い女性 同士は寄り添って歩き、時には手をつないで歩く姿も見受けられます。それに対して男性同士では少し間隔をあけて歩くことが多いでしょう。人間も相手との距 離感を自然と保っていますが、イルカでも同じような感覚があるのかもしれません。


イルカは自分の名前を発している?

野生のイルカは群れで生活していて、仲よく暮らしていくためのコミュニケーションや社会行動を行っています。シグネチャーホイッスルと呼ばれるイルカの鳴音は、個体ごとに特定の抑揚を持っていて、自分の「名前」のような機能を持つのではないかと言われています。 姿が見えなくても、自分の名前を発することで、自分のいる場所を仲間に知らせて、群れがバラバラにならないようにしていると考えられているのです。